2013年4月11日木曜日

読書メモ


「日本の思想」丸山真男

現代日本の思想が当面する問題は何か。その日本的特質はどこにあり、何に由来するものなのか。日本人の内面生活における思想の入りこみかた、それらの相互関係を構造的な角度から追究していくことによって、新しい時代の思想を創造するために、いかなる方法意識が必要であるかを問う。日本の思想のありかたを浮き彫りにした文明論的考察。

Ⅰ日本の思想
まえがき
日本思想史の包括的な研究がなぜ貧弱なのか/日本における思想的座標軸の欠如/自己認識の意味/いわゆる「伝統」思想と「外来」思想/開国の意味したもの

無構造の「伝統」その(一)思想継起の仕方/無構造の「伝統」その(二)思想受容のパターン/逆説や反語の機能転換/イデオロギー暴露の早熟的登場/無構造の伝統の原型としての固有信仰/思想評価における「道化論」

近代日本の機軸としての「国体」の創出/「国体」おける臣民の無限責任/「国体」の精神内面への滲透性

天皇制における無責任の体系/明治憲法体制における最終的判定論の問題/フィクションとしての制度とその限界の自覚/近代日本における制度と共同体/合理化の下降と共同体的心情の上昇/制度化の進展と「人情」の矛盾

二つの思考様式の対立/実感信仰の発生/理論における無限責任と無責任

Ⅱ近代日本の思想と文学-一つのケース・スタディとして-
まえがき
政治-科学-文学

明治末年における文学と政治という問題の立てかた/文学の世界をおそった「台風」/「社会」の登場による走路の接近/マルクス主義が文学に与えた「衝撃」/文学者に焼付けられたマルクス主義のイメージ/昭和文学史の光栄と悲惨/政治(=科学)の優位から政治(=文学)の優位まで

プロ文学理論における政治的および科学的なトータリズム/政治的と図式的/政治過程におけるエモーションの動員/政治における「決断」の契機/思考法としてのトータリズムと官僚制合理主義/政治の全体像と日常政治との完全対応関係/方法的トータリズムの典型/政治(=科学)像の崩壊-転向の始点と終点/日本の近代文学における国家と個人/「台風」の逆転と作家の対応の諸形態/旧プロ文学者における文学の内面化と個体化/対立物(文学主義)への移行契機

文化の危機への国際的な対応/各文化領域における「自律性」の模索/政治・科学・文学における同盟と対抗の関係・科学主義の盲点/トータリズムの遺産の否定的継承/「意匠」剥離の後に来るもの

Ⅲ思想のあり方について
人間はイメージを頼りにして物事を判断する/イメージが作り出す新しい現実/新しい形の自己疎外/ササラ型とタコツボ型/近代日本の学問の受け入れかた/共通の基盤がない論争/近代的組織体のタコツボ化/組織における隠語の発生と偏見の沈殿/国内的鎖国と国際的開国/被害者意識の氾濫/戦後マス・コミュニケーションの役割/組織の力という通念の盲点/階級別にたたない組織化の意味/多元的なイメージを合成する思考法の必要

Ⅳ「である」ことと「する」こと
「権利の上にねむる者」/近代社会における制度の考え方/徳川時代を例にとると/「である」社会と「である」思想/「する」組織の社会的台頭/業績本位という意味/経済の世界では/制度の建て前だけからの判断/理想状態の神聖化/政治行動についての考え方/市民生活と政治/日本の急激な「近代化」/「する」価値と「である」価値との倒錯/学問や芸術における価値の意味/価値倒錯を再転倒するために

あとがき

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